妄想

2010年11月11日 (木)

満足・・・ディレクターズ カット版

         男は右巻きのシングルハンドルを回しながら 《満足》 だった。

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                    『あなたはそれでいいの』

                        『いいって?』

                      『満足かって事よ』

                    『それは俺が決める事だ』

                           ・

                           ・

                           ・

                      『聞いてどうする』

                    『どうもしないわ・・・でも』

                       一呼吸おいて

                      『でも?  なんだ』

                その後 女が何と言ったか覚えていない。

                 時々だが、昔のたわいもない会話が脳裏をかすめる。

                  話自体のストーリーも覚えていない。

              しかし このフレーズだけは耳に付いて離れない。

                   別にどうって事ない女だった。

            時々飯を喰い、時々酒を呑んだり ただそれだけだった。

                 いわゆる 経緯(いきさつ)も曖昧で

            それ自体が男にとっての状況証拠をカモフラージュする

                   防衛本能だったのかもしれない。

                     男が 聞いてもいないのに 

                         『秘書よ』 

                         と言った。

              言った女の顔にはプライドめいた自信があった。

                        女の自信?

                 男は瞬間的な匂いを感じ獲っていた

           一般的にはフェロモンと称されている 《匂い》 であるが

        どこそこのブランドから新発売された 科学的なフェロモンじゃなく

               女の部分部分から発散される 《匂い》である。

          おそらくこの女の場合は、秘書という言葉を相手に発する事で

                    自信めいたエクスタシーを感じ、

             相手より優位に立とうとする自己顕示欲が旺盛になり

          この女にとっての最高のセックスアピールを放出するのだろう。

         昔 某国の元大統領夫人も自己顕示欲の塊だったと記憶している。

                  自分で言うんだから秘書なんだろう。

                ただそれがどうであれ男には関係ない事だ。

                  一度だけ 《聞いた?》 事があった。

              『秘書なんだからゴルフにも付いて行くんだろう?』

                       『ええ 行くわよ』

                     『大変だな。 持ち物は』

               女は きょとん とした顔で男を見ていたが

                   持ち物の意味が解ったらしく

               見る見る内に女の顔が真っ赤になっていく。

                    ウブだから赤くなったのか?

                  ズボシだったから赤くなったのか?

                その年で、前者であることはないだろう。

                 ≪おまえは、それで満足なのか?≫

               G-SHOCK 右上のライティングボタンを押す

                  横長の文字盤が淡いグリーンになり

                         【AM 3:26】

                 男は 『時間だな』 と、誰に言うでもなく

            背後にそびえる 広大なジグソーパズルに目を向ける。

               降りてきたパズルを 《チラ》っと見ただけで

                    すぐさま 左方向に頭を向け

                  目だけを左右ジグザグに動かした。

                    男のこだわりなのだろう。

                《来た道とは別ルート》 を選択している。

        両手をいっぱいに広げ 足を胸まで引き上げながら よじ登っていく。

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   安物のスパイクならピンが抜けたり ブーツの中で足が悲鳴をあげているであろう

        男はダイワのスパイクに 安心を預けながら しかも全力で登っていく。

             右のこめかみから 一筋の汗が“ツー”っと流れ

                もみ上げ辺りの脂肪のない皮膚を過ぎ

             少しだけ伸び始めたあごひげにかかったところで

                    次の汗が流れはじめる。

        男は 逆バンクテトラになりつつある手前で《小休止》の体勢をとる

            4面体の4脚ブロックに両足を絡め、両手を離す。

              その両手を引力に任せ 《だらん》 とさせる

                    胸を張って 《反る》 感じだ。

                    そして 一瞬 直腹筋を抜く

        すると股関節から上が 海面に引っ張られ一気に水平に近くなる

            男は40度に傾いたところで 全神経を腹筋に集中させ

                      直腹筋を起動させた。

                       反応は早かった。

           股関節から首にかけて ぶ厚い鉄板でも入ったかのように

                 《ピーン》  と、急に傾斜が止まった。

          相変わらず両手は 《だらん》 としたままブラブラしている。

             完全にテトラ側面から上半身を出した形になった。

                       5秒・・・10秒・・・

               そろそろ直腹筋が悲鳴を上げるころだ

            直腹筋は起動させたまま 《肺呼吸》 はしている

   30秒たったところで直腹筋よりも 胸鎖系の筋肉が先に悲鳴を上げ始めた。

             男は首を4・5回振り 両手を真上に上げ

                     テトラ先端を掴んだ。

               いよいよ 逆バンクへの挑戦が始まった・・・

                          ・

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                          ・

                          ・

         最後はテトラ側面に対し、少し張り出したところに両足をそろえ

                   堤防の上に両手を乗せた。

                  一呼吸置き・・・一瞬低くなった

                        次の瞬間

          肩甲骨から肩にかけての筋肉が異様なほどに盛り上がり

                                MAZUME REDMOON がキツそうにしている

                      スイッチを解除した

                圧縮されたスプリングが一気に開放し

         強靭な脚筋と大胸筋の力により 音もなく堤防の上に着地する。

                      呼吸の乱れはない。

               『わたしは・・・わたしは・・・満足じゃない』

              『そう だな・・・それはお前が決めるコトだ。』

         風が変わったのか 木蓮の甘い香りがない事に男は気付いた。

                    軽く汗をかいた体には 

                        ほんの少し

       そう   ほんの少しだけ  甘い香りが欲しかったのかもしれない・・・

      男は 満足だったはずの 今しがたの過去を 見つめようとしてやめた。

          一瞬風が吹いたが、探しているものはやはりなかった。

                  『あなたは それで満足なの?』

                    男は  誰に言うでもなく

                         『ああ』

 

                  初めて答えたような気がした。

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2010年11月 1日 (月)

狩猟の始まり・・・ディレクターズ カット版

                          エンジンキーを切ると自動的にルームランプが点く。

             5秒ほどでランプは消え 一気に闇が襲ってくる

              更に目を閉じ 5秒・・・・・ 闇に包まれていた

              “もう少し もう少し”って誰かが囁いている・・・

                      そんな気がした。

                 スーっと目を開けると 少し左に

        ナトリュウム燈だろう オレンジ色の外灯が虫達を集めていた。

            男は左腕のG-SHOCKのライティングボタンを押す

                        【AM 2:06】

      別にコレといって 男の好きなアイテムではないが、コイツを使い始めて2年。

                       1_img_0347

            

           文字盤も小さいし周りの4つのボタンも操作しにくい。

          以前使ってたセイコーランナーズの方が遥かに使いやすい。

               全てにおいてG-SHOCKより使いやすい。

             しかしながら1点だけ 対水圧だけは勝っている。

           若いライバルは【10BAR】に対し老計ながら【20BAR】

        水仕事や水泳・ジェットスキーには使えるがスキューバには不向き。

                      2年くらい前だろうか?

               『スキンダイブくらいなら使えるだろう』と思い、

                     何気に手に取った・・・

                     “なんだ? こいつ?”

              完成し尽されたランナーズの感触とは別物・・・。

                   扱いやすい女とはやはり 違う

                       たかだか時計だ

                  しかも一万円もしない安い時計だ

                   《いわゆる キリ》って奴さ・・・

                      利き手に時計を包み

              男は文字盤に親指を当て 力を込めていった

                    上腕二頭筋は眠っているが

               とう側手根・尺側手根筋から隆起が始まり

                    三角筋に伝わったときには 

                 男が瞬間的に意識を強めたせいか

           背面部の広背筋から僧帽筋にかけてがピークを迎える。

                      一瞬だったと思う・・・

                店の女性店員が男?を感じ取ったのか

                   気配の方へ 目だけを動かす

                  その時に男は狂気を消していた。 

                  文字盤は悲鳴を上げることもなく

                     男を じっと 見つめている

          又、戦車のキャタピラくらいの硬いベルトもキライではなかった。

                        1_img_0349

               即買いではなかったが、目が合ってしまった。

                  美人に会った時の感じに似ている。

               お互い 一瞬 目を合わせるが 逸らしてしまう。

         一呼吸おいて 相手のいそうな場所に目をやると又、目が合う

                 『やぁ!』って、美人には近づき難いが、

              時が相手なら なお更 無言で近づかなければ・・・

               水洗いし大事に使う なんて事は一切せずに

                    男の道具として使うだけである。

           壊れたら又、別のを買えばいい。未練なんてサラサラない。

      たまに 外すのを忘れナイロンタオルでボディーを洗ってる時に《気づく》

                       そんなもんだ。

   ドアロックを解除し 右肩をあて もたれるように上半身だけを風にさらしてみる。

                   ちょっとだけ 風を吸い込んでみる。

                         少し・・・少し

           舌の奥で喉をふさぎ 肺に入った風を少しづつ 出してみる。

                       南西の風だと思う。

              その風上に 木蓮の花が咲いているのだろう。

               ほんの少し 色のついた香りが鼻腔に残る。

                    男は思い切って出てみた。

                    身長 178cm 体重68kg

                     年の頃は35才頃だろう

          テットオムの黒いハイネックシャツにレッドペッパーのストレート

           皮ベルトはクロムハーツ バックルはミリタリータガー

            おそらく合わせているのだろう CHクロスがさり気ない。

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               これがフィリグリーだったら台無しである。

              靴にいたってはローファー系のモンターナ

             髪は漆黒のように黒く クールカットにしている。

           テットオムを脱ぎ 黒い BODY WILD のTシャツになると

                       1_img_0353_2

                         着痩せするタイプなのであろう、分厚い胸板がむき出しに

                  上腕二頭筋から手首にかけてのラインが 二等辺三角形のようだ。

       胸板から腹にかけては ワンサイズ小さ目の BODY WILD のせいか

        同じ年頃の管理職達とは明らかに違う 刃金のような締まり具合だ。

                   15℃とはいえ 深夜2:00すぎ

           さすがの男も上だけは防寒ジャンパーのジッパーを上げた。

              そして マズメレッドムーンネイビーを一瞬で着る。

             羽織ってからジッパーを上げるまでの動作が一連だ。

               男の背中をみると ルアーケースが外してある。

         男にとって 背中のケースなど無用の長物でしかないのであろう。

                事務的にアブガルシアとイグジストをセットし

         イグからイエローの4lbPEを出し RS-732ULS のガイドに通す

                    トップガイドからの4lbを摘みフロロの3.5lbに ノットを組み込む。

                                                  1_img_0351

                            男は一点だけを見つめ器用に指を動かしている。

               十分に絞め込んだあと 余分なラインをポケットからの鋏で切り取る。

                            切りくずは小さいビニール袋に入れてしまった。

                   男が仮に、切れっぱしを捨てる姿を想像してみると 実に滑稽だ。

                                               全く 絵にならない。

                           そんな妄想をしてる間に 男は 3.5lbの端を掴み

                                               3回腕を広げた。

                                            いわゆる《3ヒロ》である。

                       通常なら《1ヒロ》までであるが、おそらく男のこだわりだろう・・・

         2gの“めばる弾丸”をノーネームノットで絞め込み 余分な切れ端を切ろうとした

                                                        『あっ』

                       木蓮の甘い香りが背中から漆黒の髪にかけて男を揺らした。

                                                       『ちぇっ』

                     左手には小さいビニール袋が甘い香りだけを入れて揺れていた。

                    ビニール袋のチャックを締めレッドムーンの右の胸ポケットに入れ

                                                 6LEDを首に掛ける

                      ライトはまだ点けない

                                 シューズケースから ダイワのスパイクを出す。

                        近くには民家もあり音が出ないよう そっとスパイクを履き

                                                静かにリアドアを閉めた。

                 10歩ほど歩くと広大なテトラ帯が広がり 無限の可能性を秘めている。

                男は外灯の下に立ち 左から右にかけて ユックリ頭を動かしている。

              完全なる闇夜であるが、夜目の利く男にとって

                                   ジグソーのように並べられたテトラ帯でも

                           軽いウオーミングアップ程度のパズルである。

                       1_img_0117

                                             下る道順は決まった。

                                               狩猟の始まりである。

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2009年4月11日 (土)

ニナリッチとほうづえをつく女・・・

     男は MAZUME REDMOON LIFEJACKET を外し ノーマルになった。

                       満足な釣果だ。

     人間が立つには5分が限度のようなテトラの上で60分間ロッドを振り続けた

                立ち位置的には 外海向き 海面まで3m

        さすがの男もふくらはぎから大腿部にかけてが悲鳴をあげている。

           そのストレッチも兼ねての帰路を別ルートで検索していた。

      ジグソーのようなテトラ帯を全力でよじ登った時には無風状態だったが

                    徐々に装備を外していくと

                       夜明けが近いのか

             海からの むせるような潮の匂いが湧き上がってくる。

        この男にとって《潮の匂い》は女性の放つのフェロモンにも似ている。

                 肺の中の空気を全部絞り出してから

                      思いっきり 吸ってみる

            鼻腔の奥の神経(感覚)が別の扉を解き放とうとしている。

                          一瞬・・・

               二日前の事が 【フラッシュバック】してくる・・・

         この街は ご他聞にもれず 合併騒動に翻弄されていた。

  以前は8万人クラスの街であったが2市4町の合併により14万強の人口になった。

    とは言っても、住民にとって具体的に《何がどう良くなるのか》が不透明であり

           合併後も どの町と どの町がくっついたのかも分からず

                市民はなんとなく メディアからの情報で

           【大きくなった街】と言う 安堵感に惑わされていた。

      それこそが 政治舞台での格好のパフォーマンス材料となったのである。

            I市は県庁であるM市から西に位置するところであり

                  市の真ん中を古い国道が通り

               北側にやたらと信号の多いバイパスを通し

        南側には農耕地を買収し片側2車線の無駄に広い道路を開通させた。

             大型の病院跡地に○○億円の予算を投じ役所を建て

             おまけに回収予定のない 箱○を建設しようとしている。

             少し遅い昼飯を探しにバイパスを西に走らせている。

                         1_1_img_0390

              別にあてがあるわけでもなく・・・なんとなくである

           この先 西に行っても目当ての数は少なくなるばかりなので

                 古い国道に向けて左折ウインカーを出す。

                    国道に出るまでの数百メートルに

              とんこつをウリに出しているチェーン店のラーメン屋

                  駐車場に入ってみると 満車である。

         よく見ると駐車中の車の中には順番待ちの家族連れが待機中だ。

               男は うんざりだった。 左折ウインカーを出し

                       国道に向けて発信した。

           結婚式場を右手に確認すれば すぐ国道前の交差点である。

                 正面のファミレスには目もくれず西に向かう。

                大きめの交差点の左側に居酒屋 コーヒ-店

             その隣にパチンコ屋があり 向こうにラーメン屋があった。

        駐車場には数台の車があり カウンターくらいなら空いてると確信した。

         一番奥のスペースに サイドミラーだけを見て器用にバック駐車した。

                      モカシンの足は地上に降りた。

               エンジンキーをRED PEPPERの右に突っ込み

       ベルトはRolo de Maroで購入した 白いレザーものでバックルは大きい

                          1_img_0361

                    黒いTシャツにジージャンのみ・・・

                  男の癖なのだろう 少し猫背ぎみに歩く。

            ここの店もチェーン店であり こってり系をうりにしている。

                  店員 『いらっしゃいませ 何名様ですか?』

                           男 『一人だ』

                      店員 『お好きな席にどうぞ』

            入って店の中心にL字型のカウンター  8人が限度だろう。

                    左側に4人掛けのテーブル席が4つ

                         家族連れと若いカップル

               高校生らしいグループが二組 クラブ活動の仲間らしく

                        全員が坊主姿であった。

                    カウンターの奥には座敷が3つあり

              作業員風の男たちが3人 スポーツ紙を広げながら

                    週末競馬の予想をわめいている。

                     L字カウンターの最奥に決めた。

                スツールに腰かけ カウンター内にいる店員に

                  魚介系スープのラーメンと餃子を注文した。

                      何気に窓の外を眺めていると

                    駐車場に一台のBMWが入ってきた

                          赤っぽい色だと思う。

               程なく 店の自動ドアが開き 女性が入ってきた。

                        店員 『何名様ですか?』

                   女性は指を 1本だけ立ててみせた

                     店員 『お好きな席にどうぞ。』

                         変わった女だ

      牛丼屋とラーメン屋は 普通 女性一人では入り難いものと聞いた事がある。

                  三十路は少し過ぎているだろう・・・

            細身で背が高く 髪には緩いカールがかけてある。

          眉は細く 手入れが行き届いて 一重まぶたとのバランスがいい

          鼻筋は 眉間からまっすぐ頂点まで行き 日本人離れを思わせる。

                 上唇は薄いが下唇は適度に肉厚で

           薄く塗ったリップが艶を増し 女性そのものを感じさせる。

              フェラガモのブラックミュールにローライズジーンズ

               グレーのパーカーを羽織っただけのラフスタイルだが

                唇の上にある ほくろが 全体の印象を引き締め

                      むせるように艶めかしい・・・

                       赤いBMで 容姿端麗

                 服装もラフでありながら手抜きはない

                    この街では目立つ存在だろう。

        この女にはおそらく かなりのスポンサーが付いていると思わせた。

            でなきゃ、土地成金か夢の宝くじにでも当選したか・・・

                  この美貌で土地成金? 宝くじ?

                  スポンサーの方が妥当だろう・・・

         女は店内を左から右に見回し 少しだけ顔を戻し 男の方を見た。

                    カウンターの方へ進んだ。

       高校生男子のグループは全員が半開きに口を開け 女を目で追っている

              グループ中のニキビ面は小鼻がヒクヒクしていて

                   今にも爆発しそうな勢いだ。

                      男の右隣に立った。

                男の方を向き 『隣 いいかしら?』

        まったく 空いているカウンターの席を無視して 男の隣を選んだ

                     やはり 変わった女だ。

                    男は 別に断る理由もなく

           ましてや こんな美人さんにご指名頂いたのだから

                 少し付き合っても悪くないはずだ。

           ニナリッチのレールデュタン クチュールエディション が

               女の体臭と絡まり男の鼻腔の奥をくすぐる。

     高校生男子グループ達は ニナリッチの誘惑に耐え切れなかったのだろう。

            爆発しそうな高校生数名はトイレに駆け込んだのが見えた。

                     男は正面を向いたまま

 

                       『俺の横で・・・』

                と 言いかけながら女の方を見た

             女はそのタイミングを計っていたのだろう

                   すかさず店員の方を向いて

                     『同じものね』と言った。

              店員は 『えっ?』といった感じで女を見た。

                 女は男の方を指差していた。

           店員は女に軽く頭を下げ 厨房にオーダーを通した。

               女は正面を向いたままスツールに腰かけ

              カウンターに両手を広げ前に押し出し

                        両肘をついた。

             『ふー』っと言って 肩の力を抜き 肘を曲げながら

                 両手の甲の上に自分のあごを乗せた

                    そして男の方に顔を向けた

                      《ほおづえをつく女》

                        1_img_0354

               『今からお昼なの・・・ 隣 いいでしょ?』 

                  男は探りを入れてみる事にした。

          正面を向きながら 『遅いんだな』 と言って 一呼吸置き

                 全神経を集中しながら 女の方を向いた。

                   反射的に女は顔を正面に向け

               『たまには誰かと お昼したいじゃない』

                 男は数秒間 女の左横顔を観た。

                    女は ゴクリと唾を呑んだ。

            薄っすらとピンクがかった喉が別の生き物のようだ。

                『そうか?俺はいつも一人だけどな』

                       と 続けざまに

              『いい女はやはり 左側から見るもんだな』

                  男はこちらから攻撃を掛けた。

             【ほうづえ】をついた女は更に右を向いた。

                  カールした髪が ふわりと揺れた

                 青白いうなじにも ほくろがあった。

                 女は男の視線を感じているはずだ

         女は少しだけ頭を下げながら正面を向き 男の方に顔を向けた。

               男は女の顔を正面に見ながら更に言った。

               『正面も悪くない』 正直 実にいい女だ。

                  『右は悪いみたいじゃない』

                     『自信ないのか?』

           男の質問を遮るように二人のオーダーが運ばれてきた。

                      1_img_0355

       女は 『さー食べるわよ』と言って器に顔を近づけ小鼻を膨らませた。

           食とSEXは共通する・・・と 何かの本で読んだことがある。

            二人はほとんど会話もせず むさぼるように堪能した。

                   二人とも10分ほどで平らげ

                 女は 『ふー 熱かった』と言って

              コップの水を喉を鳴らしながら呑んでいる。

                      1_img_0359

        体温が上がったのか ニナリッチが濃厚な匂いになっていくのが分かる。

                     『右も見てみる?』

                      『今からか?』

                     『見たくないの?』

                 『夜までには まだ時間がある』

               『へぇ~ 夜見たいんだ やらしい』

                『男はやらしいもんさ 嫌いか?』

              『好きって言ってほしい?嫌いって・・・?』

                『顔に大好きって書いてあるぜ』

                       『普通よ』

                   『自分基準の普通か?』

                       続けざまに

              『スポンサーは普通で満足してるのか?』

           一瞬女の顔が白っぽくなり 目じりが吊り上った。

                   完全にメス猫の顔になった。

             髪をワシ掴みにして振り回したい衝動にかられる。

                  女のほうが一枚上手だったようだ

                    男の挑発には乗らず。

                       少しだけ笑い

                      『たぶんね・・・』

                         突然

           男は自分の伝票と女の伝票も掴み 立ち上がった。

                  女が口を開け何かを言った・・・

                     『ねぇ・・・』だと思う。

    男は女の体臭とニナリッチの香りを十分に吸い込み 記憶の奥にしまい込んだ。

                  『どこかの夜で逢いたいもんだな』

                  『夜までにはまだ時間があるわよ』

                  『それまでに右側も化粧をしとけよ』

                     『してないみたいじゃない』

                    『どこかの夜で見てやるよ』

                  女がまた何か言おうとしたのを感じ

                   男はレジに向かって歩き出した。

  その時 座敷にいた作業員風の男達3名が女に声を掛け始めたのが感じられた。

        【ほおずえをつく女】の事だ 軽く いなしてしまうに違いない。

                   それにしても いい女だった。

      合併の恩恵なのかバイパスからニナリッチとほうずえをつく女が流れてきた。

        フラッシュバックが途切れたところで 東の空が白み始めていた。

                    エンジンキーを回しながら

                         つぶやいた

                    『ニナリッチとほうずえか・・・』

                     Img_0354

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2009年3月22日 (日)

満足・・・

         男は右巻きのシングルハンドルを回しながら 《満足》 だった。

                    『あなたはそれでいいの』

                        『いいって?』

                      『満足かって事よ』

                    『それは俺が決める事だ』

                           ・

                           ・

                           ・

                      『聞いてどうする』

                    『どうもしないわ・・・でも』

                       『でも?なんだ』

                その後 女が何と言ったか覚えていない。

        釣りをしてる時 時々だが昔のたわいもない会話が脳裏をかすめる。

                  話自体のストーリーも覚えていない。

              しかし このフレーズだけは耳に付いて離れない。

                   別にどうって事ない女だった。

            時々飯を喰い、時々酒を呑んだり ただそれだけだった。

                 いわゆる 経緯(いきさつ)も曖昧で

            それ自体が男にとっての状況証拠をカモフラージュする

                   防衛本能だったのかもしれない。

                     男が 聞いてもいないのに 

                         『秘書よ』 

                         と言った。

              言った女の顔にはプライドめいた自信があった。

                        女の自信?

                 男は瞬間的な匂いを感じ獲っていた

           一般的にはフェロモンと称されている 《匂い》 であるが

        どこそこのブランドから新発売された 科学的なフェロモンじゃなく

                    目から溢れ出すフェロモン

                    鼻から溢れ出すフェロモン

                    唇から溢れ出すフェロモン

                    個人により さまざまである。

          おそらくこの女の場合は、秘書という言葉を相手に発する事で

                    自信めいたエクスタシーを感じ、

             相手より優位に立とうとする自己顕示欲が旺盛になり

          この女にとっての最高のセックスアピールを放出するのだろう。

         昔 某国の元大統領夫人も自己顕示欲の塊だったと記憶している。

                  自分で言うんだから秘書なんだろう。

                ただそれがどうであれ男には関係ない事だ。

                  一度だけ 《聞いた?》 事があった。

              『秘書なんだからゴルフにも付いて行くんだろう?』

                       『ええ 行くわよ』

                     『大変だな。 持ち物は』

               女は きょとん とした顔で男を見ていたが

                   持ち物の意味が解ったらしく

               見る見る内に女の顔が真っ赤になっていく。

                    ウブだから赤くなったのか?

                  ズボシだったから赤くなったのか?

                その年で、前者であることはないだろう。

               G-SHOCK 右上のライティングボタンを押す

                  横長の文字盤が淡いグリーンになり

                         【AM 3:26】

                 男は 『時間だな』 と、誰に言うでもなく

             背後にそびえる広大なジグソーパズルに目を向ける。

               降りてきたパズルを 《チラ》っと見ただけで

                    すぐさま 左方向に頭を向け

                  目だけを左右ジグザグに動かした。

                    男のこだわりなのだろう。

                《来た道とは別ルート》 を選択している。

        両手をいっぱいに広げ 足を胸まで引き上げながら よじ登っていく。

                       1_img_4075

   安物のスパイクならピンが抜けたり ブーツの中で足が悲鳴をあげているであろう

        男はダイワのスパイクに 安心を預けながら しかも全力で登っていく。

               最後は堤防の上に両手を乗せ 一瞬低くなった

                         次の瞬間

          肩甲骨から肩にかけての筋肉が異様なほどに盛り上がり

                                MAZUME REDMOON がキツそうにしている

                    圧縮したスイッチを解除した

           強靭な脚筋と大胸筋の力により音もなく堤防の上に着地する。

                      呼吸の乱れはない。

          風が変わったのか 木蓮の甘い香りがない事に男は気付いた。

                       満足であった。

             先ほど《妄想》途中 JEEP君に電話しましたが

                    釣りに出ているそーです。 

              今頃は【満足】する結果が出たか確認します

                           ・

                           ・

                           ・

               ('。' 9"---

           彡 彡 (((ノ; ̄д)ノ彡 彡 爆風だそうです

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2009年3月20日 (金)

狩猟の始まり・・・

            エンジンキーを切ると自動的にルームランプが点く。

                左腕のG-SHOCKは 【AM 2:06】

      別にコレといって 男の好きなアイテムではないが、コイツを使い始めて2年。

                       1_img_0347

            文字盤も小さいし周りの4つのボタンも操作しにくい。

          以前使ってた○イコー○ンナーズの方が遥かに使いやすい。

               全てにおいてG-SHOCKより使いやすい。

             しかしながら1点だけ 対水圧だけは勝っている。

           若いライバルは【10BAR】に対し老計ながら【20BAR】

        水仕事や水泳・ジェットスキーには使えるがスキューバには不向き。

               『スキンダイブくらいなら使えるだろう』と思い、

           又、戦車のキャタピラくらいの硬いベルトもキライではなかった。

                        1_img_0349

               即買いではなかったが、目が合ってしまった。

                  美人に会った時の感じに似ている。

               お互い 一瞬 目を合わせるが 逸らしてしまう。

         一呼吸おいて 相手のいそうな場所に目をやると又、目が合う

                 『やぁ!』って、美人には近づき難いが、

              時が相手なら なお更 無言で近づかなければ・・・

               水洗いし大事に使う なんて事は一切せずに

                    男の道具として使うだけである。

           壊れたら又、別のを買えばいい。未練なんてサラサラない。

      たまに 外すのを忘れナイロンタオルでボディーを洗ってる時に《気づく》

                       そのくらいなもんだ。

   ドアロックを解除し 右肩をあて もたれるように上半身だけを風にさらしてみる。

                   ちょっとだけ 風を吸い込んでみる。

                         少し・・・少し

           舌の奥で喉をふさぎ 肺に入った風を少しづつ 出してみる。

                       南西の風だと思う。

              その風上に 木蓮の花が咲いているのだろう。

               ほんの少し 色のついた香りが鼻腔に残る。

                    男は思い切って出てみた。

                    身長 178cm 体重68kg

                     年の頃は35才頃だろう

          テットオムの黒いハイネックのシャツにレッドペッパーのストレート

           皮ベルトはもちろんクロムハーツ バックルはミリタリータガー

             おそらく合わせているのだろう CHクロスがさり気ない。

                       1_img_0350

               これがフィリグリーだったら台無しである。

              靴にいたってはローファー系のモンターナ

             髪は漆黒のように黒く クールカットにしている。

           テットオムを脱ぎ 黒い BODY WILD のTシャツになると

                       1_img_0353_2

                         着痩せするタイプなのであろう、分厚い胸板がむき出しに

                  上腕二頭筋から手首にかけてのラインが 二等辺三角形のようだ。

       胸板から腹にかけては ワンサイズ小さ目の BODY WILD のせいか

        同じ年頃の管理職達とは明らかに違う 刃金のような締まり具合だ。

                   15℃とはいえ 深夜2:00すぎ

           さすがの男も上だけは防寒ジャンパーのジッパーを上げた。

              そして マズメレッドムーンネイビーを一瞬で着る。

             羽織ってからジッパーを上げるまでの動作が一連だ。

               男の背中をみると ルアーケースが外してある。

         男にとって 背中のケースなど無用の長物でしかないのであろう。

                事務的にアブガルシアとイグジストをセットし

         イグからイエローの4lbPEを出し RS-732ULS のガイドに通す

                    トップガイドからの4lbを摘みフロロの3.5lbに ノットを組み込む。

                                                  1_img_0351

                            男は一点だけを見つめ器用に指を動かしている。

               十分に絞め込んだあと 余分なラインをポケットからの鋏で切り取る。

                            切りくずは小さいビニール袋に入れてしまった。

                   男が仮に、切れっぱしを捨てる姿を想像してみると 実に滑稽だ。

                                               全く 絵にならない。

                           そんな妄想をしてる間に 男は 3.5lbの端を掴み

                                               3回腕を広げた。

                                            いわゆる《3ヒロ》である。

                       通常なら《1ヒロ》までであるが、おそらく男のこだわりだろう・・・

                    2gの弾丸をノーネームノットで絞め込み 余分な切れ端を切ろうと

                                                        『あっ』

                       木蓮の甘い香りが背中から漆黒の髪にかけて男を揺らした。

                                                       『ちぇっ』

                     左手には小さいビニール袋が甘い香りだけを入れて揺れていた。

                    ビニール袋のチャックを締めレッドムーンの右の胸ポケットに入れ

                                                 6LEDを首に掛ける

                      ライトはまだ点けない

                                  衣装ケースから ダイワのスパイクを出す。

                        近くには民家もあり音が出ないよう そっとスパイクを履き

                                                静かにリアドアを閉めた。

                 10歩ほど歩くと広大なテトラ帯が広がり 無限の可能性を秘めている。

                男は外灯の下に立ち 左から右にかけて ユックリ頭を動かしている。

                                   ジグソーのように並べられたテトラ帯でも

                       男にとっては軽いウオーミングアップ程度のパズルである。

                       1_img_0117

                                             下る道順は決まった。

                                               狩猟の始まりである。

             すいません  雨降ってたんで 妄想してました。

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